第9地区  新作レビュー

★★★★★

試写会にて鑑賞。早くも、僕の今年の洋画ベスト・ワン、かもしれない。

いやあ…「SFアクション」という映画ジャンルがあるとすれば、「スター・ウォーズ」「ターミネーター」「ブレードランナー」「エイリアン」と並ぶ、またはそれに続く、エポック・メイキング的な作品になるだろう。

「アバター」も斬新で凄かったのだが、この作品の独創性、斬新さは、ちょっと特筆すべきものである。

世界観も全く違うので比較しようもないものの、あえて比べると、「アバター」がジェームズ・キャメロン監督作品というだけで、その世界観、作品世界はこれまでの作品群を発展させたもの、と予想できるし、確かに想像以上ではあったがその通りだった。

だけれど、この「第9地区」は、これまでの同様作品の影響は確かにあるが、独自の雰囲気と世界観に満ち溢れていて、社会性や娯楽性、アクション、ハードSFなど、いろいろな要素が見事に絡みあい、ひとつの映画として極めて高い完成度を誇っていた。

例えば最初、巨大なUFOが市街地の上に現れる、というのは「インディペンデンスデイ」だが、あの映画のようなお気楽さや大袈裟なところは全くない。エイリアンと人類の共存、という物語も目新しさはない。

では、何が斬新なのか。そのひとつは、この映画の舞台が南アフリカ、と設定されている点にある。南アフリカ上空にたどり着いたエイリアンたちは実はただの難民で、20数年を経て、人類たちから激しい差別の対象になっている、という展開は凄い。

主人公はエイリアンたちを管理、統制する企業の責任者で、この主人公がエイリアンたちの強制移住を実行するところから映画は思わぬ展開を見せていくが、長くアパルトヘイト(人種隔離政策)を行っていた南アフリカの空気感や雰囲気が妙なリアリティを映画を与え、人間の根底にあるであろう差別意識を、鋭く、深くえぐっていく。

では社会性が強いSFかというとそれだけではなく、アクションやホラーとして見ても一級品で、ラスト近くに出てくるロボット・アクションは正直「トランスフォーマー」より興奮する出来栄え。家族愛や夫婦愛というテーマも垣間見え、最後は「感動」も用意してくれる。それだけ詰め込んでも、物語展開は破綻せず、バランスよく進むから凄い。

僕は、「痛さを感じる映画は傑作」が持論だが、この映画は、正に最初から最後までヒリヒリと痛い。残酷描写もしっかりしていて、エイリアンの造形に「気持ち悪い」という声もあるようで、この手のジャンルが苦手な人にはキツイかもしれない。

…でも、その痛さ、気持ち悪さこそが、実は作り手の狙いなのかもしれない。見た目や、言葉、文化が違うというだけで他者に感じる違和感は、時に人間を残酷にさせる。

その「違和感」こそが、実は小さな「いじめ」から「戦争」に至るまで、最も醜悪な、人間が持つ特性であり原因である、と僕は思う。この映画の持つ「痛さ」が、エンタテインメイントまで昇華している事実と衝撃を、僕は讃嘆したい、と思う。


2



2010/5/10  9:04

投稿者:マニィ

ナットマンさま、ありがとうございます。

自らの中の差別意識を感じるからこそ、自分を戒め、人に対して優しくなれると、僕は思います。

この映画は、娯楽アクションの中に、なかなか鋭い人の意識を描いていて興味深かったです。

2010/4/12  11:47

投稿者:ナットマン

 見た目や文化の違いを
いつか越えられる日が来るのでしょうか。
 そう言う私の中にも、自分で気付かないうちに
何かしらの差別意識があるような気がしてなりません…

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