告白  新作レビュー

★★★★★

※多少ですが、ネタバレが含まれています。ご注意ください。

観終わって、力が抜けた。衝撃、である。

救いようがない暗い話だが、こういうバッドエンディングな物語を、社会的な問題を孕みながら、徹底したエンタテインメントとして描く手法は、最近外国映画にはよく見られる。

ハリウッドなら「ノーカントリー」「チェンジリング」、韓国なら「チェイサー」「母なる証明」などの作品群がその範ちゅうだろう。

だが、今の日本映画界でこの作品を製作したこと、そしてこの映画が、いい意味でも悪い意味でも現在の日本映画界を牽引している東宝の配給・製作であることを考えると、その意義は深いと思う。

この映画を観て、嫌悪感を感じる人も多いだろう。「こんな映画を作りやがって!」という人もいるかもしれない。この映画による社会的影響を心配する人もいるかもしれない。

でも、映画というのは、さまざまな表現方法があっていいし、いろいろな種類の映画があって当たり前、と僕は思う。くだらない自主規制と遠い媒体だからこそ、映画という表現媒体の意味はあると思う。

でも、「誰がそんな映画を観たいのか」「こんな映画を作って果たして意味はあるのか」という企画は、実際はあるだろう。要は「志」の問題だとは思うが、そういう意味ではこの映画はそのキワキワかもしれない。

でも、今の日本映画に、幅広い選択肢が少ない、のも事実だ。社会的な問題を扱った映画や問題意識の多い日本映画は現在でも作られてはいるが、その多くが独立系製作プロダクションによる単館系映画であり、なかなか幅広い一般の観客に触れないのも事実だろう。

観客がわざわざ映画館に出向いて選択し、鑑賞料金を払って観る。だからこそ、映画は多種多様な主張ができるのだ。日本料理やイタリア料理、中華料理…辛いもの、甘いもの…お客様はそれぞれ、お金を払って、食べたいものを選んでお店に行き、料理を注文する。

それに見合うように、料理人も努力し、様々な料理を創り、お客様に提供する。同じ料理も、お客によっては「美味しい」と感じる人もいれば「マズイ」と思う人もいる。表現は違うかもしれないが、映画って、ちょっとこれに似ている、と思う。

それが、とくに最近の日本映画は、どれも同じような料理ばかりで、観客も安易な「泣ける」「感動」だけを求めているように思えてならない。韓国で「殺人の追憶」「母なる証明」「チェイサー」が大ヒットした、と聞くと、「日本でこういう映画は一般受けしないよなあ」と嘆くばかりだ。かつて、日本にもそんな映画はたくさん作られていたのに。

そういう意味で、この映画が日本のバリバリのメジャー映画会社で作られた意義は大きい。あとは観客がどう受け止めるか、だけれど。個人的には、青少年を題材にした、という点で「バトル・ロワイアル」を思い出した。アプローチも表現も深作欣二監督と中島哲也監督は全然違うけれども。

発達障がいの当事者であり、少年時代から教師や同級生(友達では、ない)の無理解やいじめに苦しみ続け、両親の理解でどうにかこうにか光を見出して生きてきた僕としては、この映画の上映中、かなり辛いものを感じたことは事実だ。

…だけれども、この映画で描かれている人間の矛盾や「闇」の部分は、オーバー気味であるとは言え、事実でもあるだろう。中島監督は、衝撃で戦慄の物語を、ワンシーンワンシーンに音楽や彩色などの味付けを加えながら、丁寧にスタイリッシュに描く。

抑え気味ではあるが、「嫌われ松子の一生」と同じアプローチだ。

映画を観ながら、ふつふつと湧きあがる絶望や怒りとともに、眼が離せない物語展開への興味、そして単純に物語としてよくできたエンタテインメイント性への感心が、同時に心にもたらされる。

そして、衝撃的なラストのシーン、セリフが終わった瞬間、中島監督の術中にまんまとはまった自分に気がつく。こんなにも集中しながら、どっと疲れるものの、不思議と途中で抱いた嫌悪感はなくなっていた。

実際の13歳があんなに残酷なのか、という批評があった。実際の事件を見てみるといい。本当に残酷な少年少女は実在するし、僕が少年時代に受けた「いじめ」も、現在告発すれば、立派な犯罪だ。彼らに、全く罪の意識などなかった。

中途半端な人格者で、子どもを傷つけてしまう先生も実際にいたし、僕への「いじめ」に気付きながら、「あなたが悪い」と平然と言う先生もいた。

この映画は、愛する人を失う、その喪失感がひとつのキイワードになっている。大切な「命」を奪われ、その復讐として新たな「命」を奪う…。そんなことに、何の意味があるのか。奪う命と奪われる命に、差はないはずなのに。作り手の意識は、映画での出来事を、決して肯定はしてないだろう。生徒役の子どもたちの「目」が印象的だ。

3



2010/6/26  11:52

投稿者:マニィ

伊達邦彦さま、お久しぶり。元気ですか?

>人を見下すのも罪、憎むのも罪。
>罪とは犯罪だけではなく、自分の心の中に生まれるもの。

その通りですね。

なかなかに深いですが、確かに不快さは残ります。でも、そこが作り手の狙いでもあるのでしょうね。

あの内容で爽快感が残ると、それはそれで問題かも、です。

2010/6/26  11:46

投稿者:マニィ

shuwestさま、ありがとうございます。

ファイナルカット版のBOX、是非、手に入れてみようと思います。

テッカードとレイチェルの会話…。それって、テッカードが実は●●●●●●なのでは?という推測に直結するという、アレですか!?

いやあ、見てみたい!

僕は、少年期から青年期にかけて、「エイリアン」「ブレードランナー」「ターミネーター」というSF映画に出会えたことを、今でも心から感謝しています。

とくに、ブレランは、本当に大好きだったので…映画館で感じたあの“感じ”は、最高でした。

当時、つらいこともいっぱいありましたが、「面白い映画を観たいから、もうちょっと人生、頑張るか」なんて思ったものです。

2010/6/26  11:39

投稿者:マニィ

ナットマンさま、ありがとうございます。

「無関心と無秩序双方の結果と暴走」とのご指摘、なるほどです。

でも僕は、その結果と暴走が心に引っかかってしまったように思います。

そこが、この映画に関心を持てるかどうかのターニングポイントなのかもしれません。

2010/6/24  0:55

投稿者:伊達邦彦

いや〜、観ました。
たしかに疲れるわ、こりゃ。

でも、人間のエゴを究極まで表現した傑作ですね。
人間って、みーんなエゴイスト。
愛さえもエゴなのかと考えてしまいました。

修哉の倣岸さと自意識の強さに嫌悪感を覚えるわけですが、
デフォルメしてあるだけで誰もが共通に持っていることかもしれません。
森口先生の復讐心もエゴだもんね。
復讐心に縛られても結局、自分を不幸にするだけなのだが、
そこから抜け出せないのが人間の弱さなのだな。

人を見下すのも罪、憎むのも罪。
罪とは犯罪だけではなく、自分の心の中に生まれるもの。
この映画に出てくる人達、自分の罪に気付かず、
一生地獄で苦しみ続けなさい!
とか思っちゃうのでした。

でもね、修哉の生い立ちを考えると、
同情して理解してやらねばと思いつつ、
ラストシーンでザマミロと思ってしまったのよ。
とゆーわけで、自分自身のエゴを発見するという・・・。
う〜ん、ワシもまだ修行が足らんな。

深いのだけど、不快さが残る映画なのだ。
次はアイアンマン2でも観て頭を空にしよっと。

2010/6/19  10:03

投稿者:shuwest

マニィさんもブレランのファイナルカットを
購入されましたか!
確かに初劇場版のラストを好きな方は多いですね。
僕もあの“開放感”大好きです。

実は、ファイナルカット版をBOXで購入すると
DISK4になんと40分もの未公開シーン集が
あるのですが、そこに“幻のエンディング”が
2パターン入っております。

なかなかにして良い感じです。
でも、2番目のパターンに出てくる
デッカードとレイチェルの会話の中身には
いろんな意味でビックリしますが…

オススメは、最初のパターンで、郊外を車で
走らせる2人に、デッカードのモノローグが
かぶさりますが、初公開版と比べても
こちらのほうが好きです。

もしご興味がありましたらオススメです。

http://ameblo.jp/shuwest/

2010/6/18  22:08

投稿者:ナットマン

もうだいぶ前に試写会で観たので、記憶が曖昧に…
個人的には無関心と無秩序双方の結果と暴走の様な気がしました。

2010/6/18  18:16

投稿者:マニィ

shuwestさま、コメントありがとうございます!

僕は映画を観たあと、原作も読んでみました。…ご指摘の通り、ラストは、映画の方は「救い」が感じられますね。

ストレートな原作の展開に対して、映画は、あの爆発が現実なのか、妄想なのか。

そして、ラストの松たか子さんのセリフ。とどめの一発。なかなかに、深いものがあります。

人が人を傷つける、いじめる、その図式は、子供→子供だけではなく、大人→子供、そして、ときに子供→大人、大人→大人ということだってある。

人が人を傷つける恐さ、そこからもたらす闇の深さを、この映画はエンタテインメイントとして描いていて、嫌悪感を感じながらも、暴力を決して肯定していない、作り手の強烈な気持ちが伝わります。

久しぶりに、ガツンときました。あと、僕はこれからも「いじめはいじめた方が100%悪い!」と叫びまくって行きます。

…てころで、先日「ブレードランナー」のファイナル・カットのDVDを購入しました。やっぱり、最初の劇場版のラストが一番好きだなあ、と改めて感じました。



2010/6/17  0:31

投稿者:shuwest

さっそく見ました!!

圧倒された映画でした。
しばらく考える能力が奪われ呆然としており、
でも、場面場面をもう一度頭の中で再生させて、
一体何が起こっていたのか?

命は「軽いのか」「重いのか」
登場する3人の“母親”の存在の意味づけとは?
松たか子の真の狙いは?

などなど、考えまくりでした。
そして、最後に松たか子が口にする“言葉”と
その時の何とも言えない表情…

松さんはあまり演技が上手いと感じなかった
女優さんではありましたが、
最後のあの表情とセリフで、認識が一変しました。

あのラストは色々な見方が出来ると思いますが、
僕はちょっぴり救いを感じました。

僕も小中学校でイジメを経験したので、
この監督さんには、“集団”による“個”への
イジメの恐ろしさをいつかは表現して
もらいたいですね。

いじめる側の罪悪感は、人数が多ければ多いほど
少なくなるけど、いじめられる側は何倍にも
なっていく恐怖…

「いじめる側が100%悪い!!」と堂々と
訴える映画…

P.S. マニィさんのレビュー、毎回楽しみです。

http://ameblo.jp/shuwest/

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