孤高のメス  新作レビュー

★★★★★

この作品は、試写会で鑑賞。2日後に「告白」を初日に観たので、今年の日本映画で僕の初の5つ星映画が、連続して出てきてビックリ。

…さて、僕には実は姉がいて、今で言う医療ミスで、9歳で亡くなっている。

聞くと、重症の肺炎を起こしていながら、かかりつけの医者が「ただの風邪だ」と言うので、そのまま亡くなった。

父は、悔しくて、悔しくて、その医者を恨みながら、姉の亡骸を一晩中抱きしめて泣いたという。

子どものころ、今は亡き母からその話を聞き、あの厳格な父親がそんなことをするのだろうか、と驚いたことがあるが、僕も父親になった今、父のその想いは痛いほど分かる。

ちなみに亡き姉の写真を見ると、僕の長女の「正美」にそっくりで、86歳になる父は「いつか、正美に家に泊まってもらい、カレーライスを作ってもらいたい。されまで死ねん」などと言っている。いろいろな想いが、あるのだろう。

で、この映画だが、主人公の外科医は、ブラックジャックのような神業的な手術技術を持ち、性格も素直で、人格も素晴らしい。

だけど、その設定が嘘くさくないのは、堤真一の素直で気負わない演技と、リアルな手術シーンの賜物だろう。そして、何より、彼が誠実な外科医になった背景として、幼いころ、医療ミスで母親を亡くした、という設定が効いている。

悪役の医者がありがちなキャラクターではあるが、主人公との対比、という意味ではあのぐらいはアリ、だと思う。その存在感があったからこそ、主人公の崇高な姿勢が浮き上がった。

この映画は、どんな状況であれ、目の前の命を救う、という医者の本来あるべき姿を、ストレートに、あまり余計なエピソードを描かずに、一本筋の通った物語として描いている。普通、ありがちな「恋愛」方向にも一切、走らないのもいい。

そこに、日本初の脳死肝移植のエピソードが、主人公たちの周りの人間模様とリンクしていく。この辺りは出来すぎのようにも思えるものの、全てのエピソードを「手術」シーンに集約させる手腕が見事で、「人を救う」技術をしっかりと観客に見せ、体感させることで、ゴチャゴチャ言わずとも、その精神性をしっかりと伝えることに成功している。

ここで描かれているのは、職業をきちんと全うすることの大切さ、だ。医者や看護師は、命を救い、病気やケガになった人を治療するのが仕事である。だから、仕事に徹する。

当たり前と言えば当たり前なのだが、僕の姉の例のように、なかなか当たり前になってないのも現状だろう。

観終わったあとに知ったことだが、成島出監督も、肉親を医療ミスで亡くした経験があのだという。その想いがあるからこそ、のこの力作だろう。

ヒロインを演じた夏川結衣の凛とした眼力にも感服。手術シーンにおける、「歌」にまつわる、ユーモラスなエピソードも、映画全体の緊張感を、いい感じで緩和している。

年代設定が20年前で、実在性抜群の市民病院の様子など、美術をはじめとするスタッフの苦心も伝わってくる。日本映画の「力」を感じさせてくれた、秀逸な作品だった。

4



2010/7/25  3:33

投稿者:マニィ

ナットマンさま、ありがとうございます。

確かに、余さんは存在感があります。時折、存在感がありすぎるときもありますが、この映画の余さんはよかったです。

夏川さん、いいです。ご指摘の通り、W主演かも。

2010/7/11  12:08

投稿者:ナットマン

 歌のエピソードは面白くもあり、逆に真剣味のある場所だからこそという感じでした。
 それと、私はなぜだかこの作品が、
夏川さんと余さんのW主演になってしまった錯覚を味わっちゃいました(笑)

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