アンストッパブル  新作レビュー

★★★★

トニー・スコット監督の映画って、アイデア抜群、滑り出し快調なのだが、大風呂敷を広げ過ぎて収集がつかなくなり、結末は尻すぼみになるものが多い、と思うのは僕だけ?

原子力潜水艦の中で男同士が火花を散らすも、最後はなんとなく仲良くなって???の「クリムゾン・タイド」や、あれだけ陰謀が渦巻きながら、あっさりカタがつく「エネミー・オブ・アメリカ」などは、その代表格だろう。最近作「デジャブ」も、着想とアイデアの着地点に整合性が必ずしもピッタリではなかったと思う。

それで、今回も、あまり期待せずに観たら、どうしてどうして、なかなかの面白さ。作業ミスで暴走する貨物列車を、2人の作業員が決死に止めようと、奮闘する物語だ。

この映画を鑑賞して、改めて、キャスティングって大切だなあ、と思った。

デンゼル・ワシントン扮するベテラン補線員は、優れた技術を持ちながら、リストラの対象になっていて、年頃の2人の娘を心配している。クリス・パイン扮する若い作業員は、離婚危機で調停の真っ最中。妻子に会えない状況で、家の周りをウロウロしていたりするが、仲間からは“コネ入社”などと揶揄されている。

こんな2人が前代未聞の暴走列車を止めるべく奮闘するのだが、こういうパニック物は、人間ドラマが描かれていないと、なかなかおもしろくならない、のは過去の傑作、名作を見ても周知の通り。

しかし、人間ドラマを描きすぎて、肝心のパニックのシークエンスが薄くなっても仕方ないし、逆に人間ドラマが薄っぺらになって印象にすら残らない映画も数多い。

その辺り、この映画はキャスティングで成功している。

例えばデンゼル・ワシントン演じるキャラクターの背景などは、セリフなどでとくに掘り下げてはいないのだが、個性的な彼が演じることで、強いプライドを持ちながら、娘2人を気にかける人間性が上手く表現されている。一見、神経質な感じがするクリス・パインも、このキャラクターにピッタリだ。

デンゼル・ワシントンは、存在感だけで物語を語れる俳優の一人だと思うが、トニー・スコットが彼をよく起用するのは、この辺りに理由があるのかもしれない。アイデア勝負のアクション映画だからこそ、こういう、存在だけで物語が語れる俳優が必要なのだろう。

いろいろ抱えている2人がパニックに立ち向かうからこそ面白い。最近の日本映画などは、主人公の背景や思いをすべてセリフで表現したりするが、2時間の映画で、そんな人が持つ雰囲気を、きちんと“映像”で見せる、これこそが映画の醍醐味だと僕は思う。

クライマックス、期待通りの展開を見せるが、それでもハラハラドキドキを感じさせる演出は、さすがにベテランのトニー・スコット。お兄さんのリドリー・スコットとはまた別の風格を漂わせている。

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