ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳  新作レビュー

★★★★★

出張先の福岡で鑑賞。

僕は17年間、地方新聞社で記者をしたが、この間、悔やんでいることがいくつかあって、そのなかのひとつが、「もう少し福島菊次郎さんを掘り下げて取材できなかったのか」ということである。

気骨の報道写真家、福島菊次郎。

国家の繁栄の裏側で、切り捨てられていった人々を撮り続けている彼は、徹底して日本という国を攻撃し、90歳になる今も年金の支給を拒み、山口県で愛犬と暮らしている。

犯罪を犯した者を撮るのに、カメラマンは法を犯しても構わない、とまで言い切る福島さんは、それでいて、被写体になった人々の苦しみにはそっと寄り添う優しさを見せる。

自衛隊の裏側を盗み撮りも交えて撮影し、自宅は放火され、暴漢にも襲われた。それでも絶対にブレない。映画は彼の過去の写真や思いをインタビューであぶりだすとともに、今は普通の老人としての暮らしぶりをとらえていく。

それが、東日本第震災と原発事故が発生し、映画は再びカメラを手にして福島で取材をする姿をとらえる。強風で飛ばされそうになっても、素早くカメラを構え、フクシマの現状を、鋭く切り取っていく福島さん。やがて、その想いはかつてのヒロシマで取材した被爆者への想いに繋がっていく−−。

恐らく、近年では出色のドキュメンタリーだろう。

ある被爆者を撮影しながら、自ら精神を病んだ、という体験が胸を打つ。いつの時代も、社会の裏側や闇を告発するのは、個人の苦しみであり、悲劇である。そこには当事者の苦しみはもちろん、これを伝える者の苦しみもある。あまりの痛みと苦しさに、耐えかねてつけたという、太ももを切った無数の傷跡。これを写したモノクロ写真からは、凄まじいまでの被写体の叫びと、撮影者の叫びが聞こえてくるようだ。

映画では触れなかったが、福島さんは彫金作家としての一面も持っており、実は僕が住んでいる下松市の出身で、僕は彫金の作品展などで何度もお会いしているし、取材もさせてもらっている。

そのたびに、その凄まじい人生と一貫した姿勢に驚き、シビレ、掘り下げて取材したい、と思うものの、そこまでの腹がくくれなかったのである。まったくもって意気地なしの記者だったが、僕が超えられなかった線を超えて、これだけの傑作ドキュメンタリーを制作した監督以下スタッフの方々に敬意を表したい。
2



2012/9/3  11:18

投稿者:マニィ

伊達さんありがとうございます。

本当に優しい人は、あらゆる意味で強いですよね。

自分もかくありたいものです。

2012/9/1  20:24

投稿者:伊達邦彦

人の心の痛みを感じる心が優しさなのだと思う。優しいほどに自分も傷つく。その痛みに耐えることが強さである。
人は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。
なかなかそうは生きられないのだが、凄い人が世の中にはいるものだ。

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