長州ファイブ  新作レビュー

見た日/8月某日 ★★★

 試写会で拝見しました。

 「長州ファイブ」とは、国禁を犯して藩からイギリスに留学した伊藤博文、山尾庸三、井上勝、遠藤勤助、井上馨という長州藩の若者たちのこと。イギリスの人がこう呼んだことに由来するのだが、この5人の若者たちはそれぞれ帰国してから自分たちが学んだことを国づくりに生かし、明治期における近代国家建設の礎となっている。

 伊藤は日本最初の内閣総理大臣を務め、山尾は今の東京大学工学部の工部大学校を設立するなど、日本工学の父と称され、井上勝は鉄道開設に尽力した。また遠藤は造幣局長として貨幣の整備を手がけ、井上馨は日本最初の外務大臣として明治外交の道を開くなど、5人はそれぞれ日本の近代化に大きな足跡を残している。

 5人の中でもっとも有名なのは伊藤博文だろうが、この映画は山尾に焦点を当てており、伊藤と井上馨が馬関戦争勃発で帰国してからは、実は聾唖教育のパイオニアでもある山尾のロンドンでのロマンチックなエピソードが中心となる。

 伊藤、井上は帰国後、高杉晋作らとともに幕府と戦うのだが、この辺りの活劇描写は一切なく、五十嵐監督は幕末に翻弄された青春群像よりは、国の礎になろうと留学した若者たちが、様々な境遇に遭遇しながら、やがてそれぞれの道に進んでいく姿を淡々と描いている。

 後半のポイントとなる、山尾と聴覚障害者の娘、エミリとのエピソードは、山尾が貧富の差という先進国の光と影を実感する重要な部分でもあるが、五十嵐監督はロマンチックさもほどほどに出しながら、ドラマチックになるのを抑えて演出していて、好感が持てた。

 活劇にせず、ファイブの心の動きを丁寧に撮っていることに様々な意見はあろう。事前にいろいろな評判は聞いていたが、実際に観るとなかなか面白い作品に仕上がっていて、やはり映画は観ないと何も言えないな、と実感した。

 志士たちの「高い志」そのものより、「志の微妙な変化」に重点を置いている点が微笑ましくもあるが、もどかしくもある。これはキャスティングにもよるのかもしれないし、演出なのかもしれないが、5人の役者から肝心の熱さが今1つ伝わらないのは、よく動くカメラとともに、この作品がやや不安定になっている原因かもしれない。ただし、それは長所と受け取る観客もいると思う。
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