プロークバックマウンテン  DVD・ビデオレビュー

見た日/10月某日 ★★★★

 これも見逃し、仕方なくDVDで見た作品。

 いやあ、一言で言えば、劇場で見たかった。こういう人間ドラマこそ、大きな画面で集中して楽しみたい。スペクタルもいいけど、丁寧に撮られた静かな作品ほど、実は大きなスクリーンでいい音響効果の劇場の方が楽しめる、というのが僕の持論。でもこの作品は、DVDでの鑑賞ではあったけれど、この数年で見た洋画の中ではトップクラスに入る感動を与えてくれた。

 これまで何度か映画の現場を見学させてもらったことがあるが、上映時間にして数分か数秒のカットにじっくり時間をかけることに驚いた。佐々部監督が「作り手の熱や情熱、思いは必ずワンカットワンカットに込められ、スクリーンに映る」と言われたことがあるが、この映画を見ていて、その言葉を思い出した。実にワンカットワンカットを丁寧に撮っていて、ひとつひとつのシーンに監督、スタッフ、俳優がかなりの準備を費やし、集中して撮影していったことが感じられる。

 保守的な中西部を舞台にした、カウボーイ2人の同性愛の物語なのだが、同性愛といっても覗き見的な色合いはこの映画には一切ないし、ラブシーンもきちんと描かれるが、変ないやらしさも全くない。まず、舞台となるブロークバックの山々の描写が実に美しい。物語は実に純粋で切ないラブストーリーで、ラスト近くの展開には、思わず胸が締め付けられる。

 ブロークバックマウンテンの山麓で羊追いの仕事に従事し、知り合ったイニスとジャックはテントの中で愛し合う。やがて別々の暮らしをして、お互いに家庭を持って普通に暮らすが、時折会いながら、お互いに芽生えた愛を確信する。2人はブロークバックでの楽園の日々に戻りたいと心の底では思いながら、日常は捨てきれない。だが、2人の思いは隠しても周囲に気づかれる感情であり、それぞれの日常生活は次第に破綻していく…。

 後半はとくに切ない。同性愛の場面を奥さんにしっかり見られて家庭が破壊していくイニスもそうだが、イニスへの思いを秘めながら、家庭生活が辛くて仕方ないジャックも実に切ない。はっきりとした周囲の差別行動は描いてはないが、保守社会では許されない秘密を抱えてしまった人間が、常に周囲を気にし、恐怖を抱えながら日常生活を送る難しさと、その中で感じる気持ちを描いていて、心に迫る。

 台湾出身で、アメリカ社会で映画を学びながら「常にアウトサイダーだった」というアン・リー監督だからこそ、この映画が撮れたのだろう。「デイ・アフター・トゥモロー」では猫背の弱弱しい高校生だったジャック役のジェイク・ギレンホールが、実にセクシーで繊細でビックリ。最近は「ジャーヘッド」や「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」でもいい味を見せていたが、同じ人とは思えない。本当に俳優という職業は、実にすごい職業だと思う。

 
0



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ