フラガール  新作レビュー

見た日/10月某日 ★★★★

 笑って泣ける良作。

 役者に対して肉体的・精神的に高度な課題を与え、物語の背景に確かに存在する、それをこなしていく凄まじいまでの葛藤を感じるというドキュメンタリー的な視点を、フィクションの面白さに身をゆだねながら楽しむという「スウイングガールズ」「ウォーターボーイズ」と同じ構図を持った作品。

 昭和40年(僕が生まれた翌年だ)。福島県の炭鉱町では、国のエネルギー政策の転換から、大幅なリストラが進み、閉鎖は時間の問題になっている。そこで炭鉱会社は雇用の確保と経済立て直しに、鉱山による温泉利用を目指し「東北にハワイを」という突拍子もない計画を立て、ハワイアンセンター建設を始める。その目玉としてフラダンスチームを設立、炭鉱夫の妻や娘からメンバーを募集し、東京から元SKDの講師を招くが…。

 前述の2作品と同様、この映画の登場人物にも、東京帰りの訳アリのフラダンスの先生や、なかなか振り付けが覚えられない身体が大きな女など、この手の映画に不可欠な、ちょっとリアリティには欠けるが、物語を盛り上げるためにデフォルメな味付けをされたキャラクターが出てくる。

 「映画」を見るとき、この「デフォルメ」されたキャラクターに乗れるか乗れないかでその映画に感動できるかどうかかなり重要になってくる。この「フラガール」は、物語の重要な要素である「炭鉱の閉鎖=時代の変化」という社会的な背景を、冒頭の鉱山を表現したCGを含め、炭鉱で働く男たちなど、しっかりと描き込んだこと点が良かった。

 ダンスによって新時代を切り開き、懸命に生活を守ろうとするダンサーたちと、炭鉱に執着し、山が捨てられない男たちをきちんと対比することで、デフォルメとリアルの間のキワキワではあるが、なぜ彼女たちがあれだけ懸命にダンスを踊るのか、説得力を持った説明がされている。そのお陰で、逆に滑稽なまでにダンスに取り組むフラガールたちが愛しく思えてくる、稀有な作りになっていた。

 ダンサーたちも、男たちも、取り組むスタンスは違うが、自分たちが先祖代々世話になってきた山を、心から愛していることに変わりはない。その慈しみが全体のトーンになっているので、この映画は心地よく、優しい。

 ただし、中心となる先生役の松雪泰子のエピソードと、リーダー役の蒼井優のエピソードが少々バラバラで散漫なため、途中、ちょっぴりもたつく点があったことは残念で、ラストに向けての展開もちょっとくどく、寺島進演じる借金取りのエピソードは不用では?とも思ってしまった。

 でも、ラストのダンスシーン(ここは現在のハワイアンセンターで撮影したのだろう。ちょっと昭和40年代の匂いがここだけしないのはご愛嬌)での見事なダンスシーンで、その不満も消し飛ぶ。「スウイングガールズ」もそうだったが、この手の映画はラストの役者たちの達成感から来たと思われる本物の涙と、2時間感情移入してきた物語としてのクライマックスがダブルになって感動を与えてくれる。

 しかし、ともすれば「バックダンサーズ!」のように、せっかく役者が必死の思いをしてパフォーマンスを披露しても、そこに到る物語が破綻していると、見てくる方はちょっと辛い。その点で言うと、この映画は中盤から後半にやや難点はあるものの、十分合格点だと思う。蒼井優のまぶしすぎる笑顔がいい。
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2006/11/9  1:17

投稿者:おたっきー

melodie様、こちらでもコメント、ありがとうございます。

松雪泰子さん、雰囲気ありましたよね。冒頭近くで見せるソロのダンス、あれは見事でした。

後半に蒼井優が同じ振り付けを披露するのだけど…。確かに、松雪さんの情熱的な踊りに比べると、いい意味で若さが感じられました。

あれも演出としたら、こりゃあすごい!ですよね。

でも、役者さんからリテイクを願い出るなんて、すごいエピソードですよね。その熱は、確かにスクリーンから伝わりました。

今年は日本映画に見るものが多く、本当に嬉しいです。

2006/11/8  21:49

投稿者:melodie

おたっきー様
自称「泣かせ映画反対派」melodieです。
引き続き、「フラガール」にもコメントさせていただきます。
私もつい先週「フラガール」見ました。
とてもいい映画、好きな映画でした。
私は個人的にダンスが好きなので、松雪泰子の情熱的なフラにも圧倒されました。
でも何といってもラストのダンスシーンは圧巻でしたね。何でも蒼井優が1回目のテイクで納得できず、監督を説き伏せて2回目に撮ったシーンだったとか。彼女の本当の感動の涙だったらしいです(1回目は演技の余裕もなく、涙もなかったらしい)。
私もショーの観客の一人となり、スタンディングオベーションしたかったです!(その日の映画の観客は誰一人拍手もしてなかった。。。)

ただ確かに寺島進のキャラクターは不要だったかもですね。

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