2013/4/3

音  nature
月がなかなか昇ってこない今宵はほとんど新月と変わりない夜となる。

夕刻。 森の中は音に満ちていた。

アカゲラはすぐそばで忙しそうに乾いた木のリズムを奏で、木肌をつかむ爪の音まで鮮明に聞こえる。

小鳥たちはあちこちでつぶやき、クマゲラがキロキロと森の奥でしゃべっている。

森はいつも何を聞いてるのだろうか?

たえず背後から細くなった忠別川の流れる音が聞こえてくる。

陽が落ちて薄暗くなると青黒い中からフクロウの声がする。

腰を上げて今日が始まるのだろうか。

まもなくすると生きものの音はしなくなった。 

ずっと。 長い時間。 遠くで川の流れる音だけがしている。

今日はとても暖かい。 とはいえ-5°ほどに冷え込んできた。

「パカーーーーーーーン!」 と木の割れるクリアな音がこだまする。

こんな時期に凍裂ではないだろうに、なんなんだろう? もう一度それは鳴る。

しばらく静けさが戻ったとき、突然、シカがけたたましい叫び声をあげる。

向かいの山間からだ。

ずっと叫んでいる。 ずーっと叫ぶ声がだんだん弱く、やがて消えた。

大小の風が出てきて、右から後ろから梢を鳴らす。

そしてふたたび川の流れだけが聞こえるようになった。

森の中にも毎日のようにストーリーが存在し、樹々は何百年もそこで聞いているのだろう。

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【かわらぬ夜〜天人峡・森の神様】
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