今回はアスペクトの続きとして、「進行相」と「一般・条件相」の用法の違いについてお話しする。
まず「進行相」は「発話時点で行われている動作」を意味する。したがって日本語の「(いま)〜している」、朝鮮標準語の「(지금)〜하고있다」に当たる。副詞「시방(いま、標:지금)」を付けることも可能である。
Q:무신거 햄수가?(무엇을 하고있습니까?) A : 책 익엄수다(책 읽고있습니다)
Q: 시방 집이 감디아? (집에 가고있니?) A: 아니, 밧디 감쩌(아니, 밭으로 가고있어)
また、「進行相」は、副詞「요사이/요사시/요짐/요주금(近頃・最近、標:요새/요즘)」との併用も可能である。「発話時点をも含む長いスパンでの現在」という捉え方か? ただし、この用法は「지내다(過す)」など「時間的な幅のある動作」を表す動詞に顕著である。どの動詞でもこの表現が可能なわけではなさそうだ。
Q : 요사이 어떵 지냄수가? (요새는 어떻게 지내고계세요?)
A : ㅎ・ㄹ 일 엇엉 영 놀암수게 (할 일 없어서 이렇게 놀고있지요)
一方、「一般・条件相」には、まず@「習慣的、規則的、未来のある時点」を表す「一般」の意味がある。日本語の「(よく・月に1度・いつか)〜する」、朝鮮標準語の「(자주/한달에 한번/언젠가)〜한다」に当たる。「一般・条件相」でも「요사이」類の副詞との併用は可能である。ただしこの場合、「時間的な幅の短い動作」や「1回で動作の完了する」動詞と併用されるように見受けされる。「進行相」の場合とは逆の関係なのかも知れない。
Q : 가이 자주 집이 옵네까? (그 아이 자주 집에 옵니까?)
A : ㅎ・ㄴㄷ・ㄹ에 ㅎ・ㄴ번 오주게(한달에 한번 오지)
ほかに、A「(〜すれば)〜する」や「(〜しても)〜する」のような「条件付の動作」の意味がある。条件「ㅎ・민(하면)」、譲歩「ㅎ・여도/해도(하여도/해도)」と併用される。
条件:경 ㄱ・ㄹ으민 됩네까? (그렇게 말하면 됩니까?)
譲歩:아멩 ㅊ・ㅈ아도 아니 나온다(아무리 찾아도 안나온다)
また、Aの応用であろうが、引用「옝/이엥(라고)」とも併用される。
引用:제줏말론 ㄴ・ㅁ삐옝 합네다(제주사투리로는 <ㄴ・ㅁ삐(무우)>라고 합니다)
「一般」と「条件」のいずれも、「発話時点で動作が進行中ではない」という点で共通している。
朝鮮半島の諸方言では「합니다/한다」は「하고있습니다/하고있다」の意味を併せ持っているので、言い換えが可能である。一方、済州方言の「進行相 햄수다」と「一般・条件相 ㅎ・ㅂ네다」は意味の重なった点がないので、言い換えできない。日本語の「します」と「しています」が言い換えできないのと似ている。
例 両親は今日仕事します →「まだ仕事が始まってはいない。今日は仕事をする予定」の意
両親は今日仕事しています→「今日のいま現在、仕事をする最中」の意
これを済州方言で表現すると次のようになる。「부모님 오늘 일ㅎㅂ네다 / 부모님 오늘 일햄수다」
朝鮮標準語では両者とも次のように表現される。「부모님 오늘 일하십니다」
中世朝鮮語では次のようになりそうだ。「어버△ㅣ 오ㄴ・ㄹ 일 ㅎ・시ㄴ・ㅇ이다 」
中世語と朝鮮半島の方言が共通している点からすると、済州方言が独自の進化を遂げたのかも知れない。
アスペクトはひとまずこれで終わりにする。次回は違うテーマをご紹介する予定である。

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