今野敏『武士マチムラ』集英社文庫 2020/11/25
「琉球新報」2016.8〜2017.3連載。
今野敏の作品は、『隠蔽捜査』シリーズや『警視庁強行犯係・樋口顕』シリーズなどTVドラマ化されている警察物をよく読んでいたが、『琉球空手』シリーズは読んだことがなかった。
この作品の主人公・松茂良興作(まつもらこうさく 1829年 - 1898年)は、琉球王国時代から明治にかけて活躍した唐手(現・空手)家であり、泊手(とまりて)中興の祖と仰がれる人物である。ちょうど琉球王国が滅びる動乱期に、不正を許さない義士としての性格をもつ松茂良には、乱暴をふるう薩摩の役人に立ち向かって懲らしめた話など数々の武勇伝が残されている。
空手そのもの、あるいはその型を「手」ティーと呼んだが、松茂良は、首里手(しゅりて)、那覇手(なはて)と並ぶ、泊手(とまりて)の伝承者であった。首里には王の師範でもある武士(武術家)松村がいたが、彼も目をかけ、弟子の育成に努めた松茂良(音は同じマチムラ)は泊(とまり)を任される。「自分を守るため」「信じるものを守るため」に。