愛知県庁本庁舎
頂部に城郭風の屋根を乗せた特異な意匠の愛知県庁本庁舎は、昭和13年(1938)3月に完成した。この形式は「帝冠様式」と呼ばれ、当時の時代の風潮を反映している。
前年の昭和12年(1937)7月7日に発生した盧溝橋事件を機に、日中戦争が勃発し、戦争の時代に突入していく。当時の国威発揚の波に乗って日本の伝統を建築にも反映させようという風潮の高まりの中で建築されたものである。
愛知県庁舎の移転は、昭和天皇御大典の記念事業の一つとして計画された。庁舎の基本設計は、建築家の西村好時氏と当時東京帝室博物館(現東京国立博物館)の設計コンペで最優秀を獲得した建築家の渡辺仁氏に委嘱し、両氏の案をもとに県建築部営繕課(主任・大西勉)が実施設計を行った。昭和8年(1933)に完成していた隣接の名古屋市役所本庁舎との調和も配慮された設計となっている。
鉄骨鉄筋コンクリート造、地上6階地下1階塔屋付き。建築面積4,666u、延べ面積28,314u、高さ39,79m。施工は戸田建設 。建築費は当時300万円であった。
外壁は2階の窓下までを花崗岩貼りにすることで堅牢感を与え、その上部6階窓下までは黄褐色のタイルを用いることにより愛知県が陶磁器どころという意味を含ませている。6階の壁面には白色の磁器タイルを用いて城の白壁を想起させる。名古屋市役所本庁舎とは趣をやや異にし、比較するとより城郭的な色彩が濃いといえる。
平成元年(1989)名古屋市都市景観重要建築物に指定。
平成10年(1998)国の有形文化財に登録。

黄褐色のタイルと白色タイル、屋根の銅板の緑青の色彩が見事に調和している。

1階部分は、花崗岩貼り。

「帝冠様式」の象徴である城郭風の屋根。6階壁面の白色磁器タイル。

市役所と県庁の調和した景観。

地鎮祭

建設当時の景観

定礎