この地区の庶民の信仰
川上貞奴は、生涯“不動明王”への信仰を持ち続け、晩年には鵜沼に「貞照寺」を建て、“不動明王”を祀った。貞奴は、東二葉町の邸に居住している時も足繁く「長久寺」にお詣りに出かけ、名古屋を去るときには自らの持仏であった“不動明王像”を「長久寺」に寄進している。「長久寺」では、今でも毎月28日に“不動明王の護摩祈祷会”が行われている。「建中寺」の“不動堂”でも28日の縁日に祈祷が行われている。清水の「首塚社」や大杉の「一願山不動院」(豪潮寺)にも“不動明王”が祭られ、現世にいろいろなご利益を与えてくれる力強い仏として、庶民に親しまれている。
「長久寺」の境内には、市内でも最も古い“庚申塚”がある。「貞祖院」には、“庚申堂”があり、珍しい木彫りの青面金剛像と三猿像が残されている。現在は、この地区では“庚申信仰”は廃れてしまったが、江戸時代には、庚申の日には、夜を徹して精進した。庶民のレクレーションを兼ねていたようだ。近在の寺院には庚申碑も数多く残されている。
鍋屋町の街角に地蔵の祠があり、いまでも蝋燭の灯が絶えない。尼ヶ坂の地蔵院や地蔵堂では、“延命地蔵”が祀られ、縁日には遠くから参詣に来る人もいる。
鍋屋町の東の端にある「観音院」(室寺)には、33体の西国霊場の観音石仏が祀られている。至福や除災など、現世利益が中心だが、観音の浄土へ往生することを願う来世の信仰も厚い。
白壁の武家屋敷に対して、大正時代頃に作られた鳥屋筋や善光寺街道に近い長屋では、屋根神様として“熱田”・“津島”・“秋葉”の三神を勧請し祀った。津島神社の天王さんは、この地区では夏の災厄除けとして広く信仰され、天王祭りの時には、鍋屋町では茅輪くぐりの神事を行い、神輿を担ぎ出す。筒井町や出来町では「山車」を曳き出している。

「長久寺」 不動明王護摩祈祷会の案内

「建中寺」 不動堂

「建中寺」 不動堂内部

「首塚社」 参拝する女性

「首塚社」 不動明王石像

「一願山不動院」(豪潮寺) 不動明王像

「貞祖院」 庚申堂

「貞祖院」 庚申堂 青面金剛木像

「長久寺」 庚申碑の祠

「尼ヶ坂地蔵堂」

「尼ヶ坂地蔵堂」内 参拝する女性

「尼ヶ坂地蔵堂」内 延命地蔵

鍋屋町の通りにあるお地蔵さん

鍋屋町の町屋の前に置かれたお地蔵さん

「観音院」(室寺) 西国三十三観音

主税町東の屋根神様

「松山神社」の茅輪くぐり

天王祭り 鍋屋町の神輿

天王祭り 筒井町の山車