先日、TVのある自然番組の最後に、大きなカエデの木を映しながら「このカエデの実が飛んで地に落ち、やがて芽吹くことだろう」と締めくくっていた。
これを見ていて、かなり違和感を感じてしまったのだ。
カエデを含め、たいていの植物はたくさん実を付ける。ところが森をじっくり観察していると、これらのほとんどは鳥やネズミなどのエサになっているのが分かるのだ。
秋の木々が実を落とす頃から、冬を越して春の新芽が出るまで、森の中はあらゆる鳥がゴソゴソ地面を引っ掻く音が聞かれる。
もちろん枯葉にまみれて、鳥に発見されない木の実もたくさんあるだろうが、鳥があれだけ探さなくてはならないことから考えたら、そのほとんどが食べられてしまうのではないかと思えるほど。
違和感を感じたのはこのあたりで、自然番組なのに、カエデの実が落ちたらそのまま発芽するのではなく、まず動物達のエサになるという視点が欠けていたこと。植物にはそれほどたくさん実を付けなくても、と思えるものが多いが、これにはもともと動物のエサ分が含まれているのである。
写真はイワシの稚魚、シラスである。
もう一つの写真はそのシラスが魚群探知機に映ったもの。湯河原の千歳川河口付近にはシラスがたくさんいて、昔はシラス漁をする船もあったようだ。
シラスは海の牧草などと呼ばれるぐらいたくさんいて、あらゆる魚のエサとなっている。
海を森に置き換えると、シラスはカエデなどの木の実のようなものではないだろうか。

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